こんにちは。白鳳社寺広報インターンの永野です。
今回は、「宮大工の人材育成」について紹介します。
まず初めに宮大工の人材育成の現状と課題、そして今後の展望を話していきます。
宮大工の世界と聞くと、「職人気質で厳格な修業」といったイメージが強いかもしれませんが、近年はその内情も複雑化し,新たな悩みや課題も浮き彫りになっています。社会全体が激変する中、人材育成のあり方も大きな転換期を迎えているのです。

・若手宮大工の減少と原因について
ここ数年、宮大工の世界においても若手人材の減少が特に深刻です。その背景にあるのは、「厳しい修業環境」「給与水準の低さ」「そもそも宮大工という職業自体の認知度の低さ」など、現実的ハードルがいくつもあります。伝統を守ることはもちろんですが、それだけでは次世代は育ちません。今求められているのは、若い人たちに「自分にもできるかもしれない」と思ってもらうための新しい取り組みです。
・人材育成の現場での取り組みについて
①長い徒弟期間(10年以上)
宮大工は、木材の癖を読む力や伝統的な継ぎ手・仕口の技術を体で覚える必要があるため、10年以上かけて一人前になることが多いです。若いうちは「木の運び方」「道具の手入れ」など基礎から徹底的に叩き込まれます。
②現場での実践中心
学校での座学よりも、実際の現場で師匠の技を見て覚えるスタイルが主流です。「刃物の研ぎ方」「木の癖の見抜き方」「寸分の狂いもない加工」そして雨風に備える構造づくりなど、図面だけでは学べない技術を体験しながら身に就てることができます。
③伝統技術の継承
宮大工は、千年以上続く社寺建築の技術を扱うため、法隆寺や伊勢神宮で使われた伝統工法を受け継ぎます。特に有名なのが、「最後の宮大工」と称された西岡常一氏が遺した「木を読め」「木に教わる」「弟子は木から学べ」など自然と向き合う姿勢です。
④精神的な教育も重視
宮大工は、単なる建築ではなく「神仏の宿る建物」を扱うため、精神性も問われます。「丁寧に扱う姿勢」「ごまかしをしない」「時間を惜しまない」「清潔・規律正しく働く」このような精神面も師匠の背中を見ながら育ちます。
⑤組織(宮大工集団)での育成
かつて西岡常一氏が構想した「堂宮大工養成塾」や、その唯一の弟子である小川三夫氏が率いる「鵤工舎(いかるがこうしゃ)」、また若手育成の門戸を開いた「鑿(のみ)の会」などはその象徴です。現在も各地の社寺建築会社では、共同生活・共同作業を通して技術と心を育成します。
⑥若手が減っているため、育成の工夫も
現代では宮大工志望者が少ないため、社寺建築会社の研修制度や職業訓練校との連携やインターン受け入れ、YouTube・SNSでの発信による認知拡大などがあります。昔ほどの徒弟制度ではなく、学校+現場のハイブリッド育成も増えています。

・宮大工の人材育成の今後の展望について
ここまで現状と課題について振り返ってきましたが、時代と共に進化する人材育成の在り方も気になるところです。
今後は、ITの活用が必要だと考えています。すでに3D設計ソフトやドローン測量などを導入し、現代の建築技術と伝統技術の融合が加速しています。
また、SNSでの宮大工の活動や実績が発信されているのを見て、少し身近にあることを私自身体験しました。オンライン講座や映像教材を通じて、日本全国どこにいても基礎から学べる環境が整いつつあります。少しハードルが高かった宮大工の世界がデジタルの力で開かれようとしています。
さらに、地方創生屋地域連携の動きも見過ごせません。各地の自治体や住民団体、大学などが協力し、宮大工の人材育成について様々なプロジェクトを立ち上げています。地元の小学生を対象としたワークショップや地域材を使った建築体験などが開催され、未来の職人種まきが始まっています。このような取り組みが今後、多様な人材を呼び込む原動力になっていくのではないかと思います。
最後に
近年の宮大工の育成は、時間をかけて技と心を練り上げる「伝統的な徒弟制度」と、体系的に学ぶ「現代的な研修・学校教育」の両輪で進められています。宮大工の人材育成を考えることは、単なる技術の伝承に留まりません。それは、私たちの暮らしや日本文化の未来をどう形作るかを見つめ直すことでもあります。激動する社会の中で、この唯一無二の技術と心をいかに次世代へ繋ぎ、多くの人に関心を持ってもらうか。私たちは今一度その原点に立ち返り、宮大工の道がより多くの人に開かれる未来を切り拓いていきたいと願っています。 弊社もその第一歩として、SNS等を通じた情報発信に全力を尽くしてまいります。
ぜひ弊社のSNSを覗いてみてください。
note:https://note.com/hakuhousyaji

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